ジャーナリスト 堤未果 ISILの人質となった湯川春菜・後藤健二両氏の痛ましい殺害事件が、日本中に衝撃と激しい怒り、深い悲しみをもたらしている。オバマ大統領を筆頭に、西欧諸国はテロリストに屈しない旨を次々に宣言、同じく人質だった自国パイロットが殺害された報復として、ヨルダンはシリア爆撃を開始した。「ISILを一掃する」というその言葉に賛同する多くの声をみて、14年前のニューヨークで感じた、強い懸念がよみがえる。一体、終わりはくるのだろうか?そしてその間私たちは、どれだけの犠牲を払うのだろう?...
アメリカの北朝鮮サイバー攻撃犯人説への違和感
ジャーナリスト 堤 未果 日本ではすぐに下火になったものの、アメリカ国内では「北朝鮮のサーバー攻撃疑惑」への非難が、オバマ大統領、FBIおよび商業マスコミによって拡大し、新年早々腑に落ちない展開を見せている。 ことの起こりはこうだ。北朝鮮のパロディ映画「ザ・インタビュー」を制作したソニーピクチャーズ社が、外部からのハッカー攻撃を受けた。「上映したら9.11を起こす」という脅迫により国内の映画館が次々に公開停止を発表、だがここから事件は急激に、国家レベルの問題に拡大してゆく。時を同じくしてFBI(米国連邦捜査局)がこのサイバー攻撃を北朝鮮による犯行だと発表し、同日の記者会見でそれを引用したオバマ大統領が「これは安全保障への脅威」だと、公式に非難したからだ。 ...
二つの選挙
「香港デモの先にある未来」
ジャーナリスト 堤 未果 二〇一七年に予定されている香港行政長官選挙制度改革への反発をきっかけに始まった, 香港の抗議デモ「オキュパイ・セントラル」。 中心核である学生組織「学民思潮」の代表で十七歳のジョシュア・ウォンは、「傘の世代」と呼ばれるポスト天安門事件世代の一人だ。15歳で同組織を立ち上げたウォンは、今回九月に香港内の大学で授業ボイコットを始め、各地のストライキを指導、最終的に金融街での占拠行動へとつなげた。 ウォンは学生達に呼びかける。「この国の未来は君たちの手の中にある」と。香港の未来を、中国本土のような縁故主義と腐敗に染まらせてはならないと。 ウォンの呼びかけに反応する学生や労働者達の姿は、一九八九年の天安門事件の背景にあった、もう一つの中国を思わせる。...