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2021年12月2日 木曜日

「ゲノム編集食品」本当に安全なのか(東京スポーツ掲載記事・全文)

2021年11月16日

自民勝利で衆院選が終了、だがその裏で日本人の食卓に続々と驚愕の新技術が近づいていることをご存知だろうか?

十月二十九日。日本政府は世界で初めて、ゲノム編集トラフグの販売・流通に許可を出した。食欲抑制成分が機能しないよう編集されたこのフグは、従来品種の最大2・4倍で成長する。
22世紀には日常食品となる予測から「22世紀フグ」と言う名前がつけられた。去年十二月に承認された、高血圧に効くギャバ成分を増やしたゲノム編集トマト、今年九月に承認された通常より肉厚のゲノム編集マダイに続き、日本で3件目になる。
安全面でも厚労省のお墨付きだ。同省は、特定箇所のDNAを切る事で遺伝子に起きる変化は、自然界でも品種改良でも起きる範囲内だとし、安全審査は不要と判断した。
狙った箇所以外が誤って切断されていないか、毒性が出ていないかなどのチェックはするが、それ以外は開発企業が書類さえ提出すればOKだ。
外部から別の遺伝子を加える遺伝子組み換え技術と違うので、特に食品表示も必要ないという。いずれは有機農産物にも混じるだろう。
政府と開発企業側は、ゲノム編集技術はコストを大幅に下げ、消費者のニーズに応え、食料不足解決に向けた道筋を作る画期的発明だという。

だが本当にそうだろうか?欧州ではゲノム編集食品にも遺伝子組み換え食品と同等の規制をかけるべきだという裁判所の判決で、ゲノム編集企業の株価が暴落した。
その後業界の猛烈なロビー活動によりこの方針は翻されたが、現在市民団体などからは強い抗議の声が上がっている。花粉が飛ぶことで周辺作物に与える影響や環境負荷、長期にわたる人体への影響など、まだまだ未知の部分が多いため、EUでは消費者の間で、慎重論が強いのだ。

一方日本はどうだろう?

高血圧に効くゲノム編集トマトを開発したサナテックシード社は、市民モニター4千人に、無料で苗を配布した。さらに同社は来年から障害児介護福祉施設に、2023年から小学校に無料苗を配布し、子供達に直接栽培させるという。夢の新技術の市場拡大に選ばれたのは、何故か高血圧には無縁の子供だ。ならば今最低限国がすべきことは、消費者の選択権を守る表示義務と、第三者による安全審査の2つだろう。
大人は思い出さねばならない。〈予防原則〉が、未来の子供達への責任と同じである事を。

出典:東京スポーツ・マンデー激論(2021年5月)